「遠過ぎた部屋のいちばん奥で」

遠く近く聞こえる、
水の音を頼りに、
僕達の運命を、
少しずつたどってゆくよ。
 
花や樹々や風のこと、
曖昧な心のこと、
真夜中に眼が醒める時、
少しずつ知ってゆくよ。
 
もう少し嬉しく、
もう少し静かに、
穏やかな希望を、
砕いては棄ててゆくよ。
 
春の夢のさなかに、
誰よりも可愛く、
色褪せた洋服を、
破いては棄ててゆくよ。
 
冬休みに、君が会いに来ると、
架空の手紙が、嘘を告げているよ。
薔薇色をした、僕の羽根の上、
息をはずませて、君は走ってた。

 
冬という名のたゆたう季節が、ひとつの僕を終わらせるよ。
春という名の風吹く夜が、雨を呼んでは花を咲かせるよ。
凛々しい君は幼過ぎた、僕は歳をとり過ぎていた。
もっと遅く生まれたかった、君と一緒に死にたかった。

手紙を燃やした炎の先で、何が僕を待ち受けてるの。
朝もやの中の約束を、君は憶えていてくれてるの。
君の身体の香りを思うと、むねの中を風が吹き抜ける。
寒くてひとりで心細くて、そっと手を組んで祈る。

桜。
菜の花。
雪柳。
よもぎ。
木蓮。
雨の中。
ミルク。
憂鬱。
朝の闇。
 
 
長いこと使ってない、言葉を吐いてみた。
例えばリリシズム。例えばヒロイズム。
川面を歩く夏の夜。見えなくなった冬の夜。
ミルクはこぼれても、時間は戻るんだ。
 

悲しいくらい涙が透んで、鏡に時計を映してみれば、
約束がまだ果たせないまま、時間が逆さに廻りだすよ。
春の陽射しが眩し過ぎて、まぶたの裏を紅く染める。
紅い嘘が見破れないまま、幸せに暮らしていけた。
 
どうして僕達、離ればなれになるの。
宇宙の法則、何を決めているの。
村祭りの日、踊り出せ娘。
昨日の出来事、もう思い出せないよ。
 

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