ある男の昔話である。

その男には、悪友がいた。
親友などではない、あくまでも悪友である。

RPGでよくあるよね、性格を 秩序-中立-混沌 と分けるやつ。
その区分けからすれば、悪友は間違いなく混沌側の人間であった。

男と悪友はイニシャルが同じだった、学校ではもちろん隣の席である。
二人はとにかく気があった。
男は秩序に近い中立であったのだが、朱に交われば赤くなるということで
悪友から影響を受け、混沌寄りの中立に性格を変えていた。
この事については、悪友を恨んでいると男は今でも嘆く。

とはいえ、あの頃は楽しかったと、男は思っている。
馬鹿なことばかりしていたがあれほど楽しかった季節は無かったと、男は言う。

3年間の高校生活を終え、二人は同じ企業に就職した。
ただ勤務先は別々で、男は東京で悪友は地元であった。

そして一年が過ぎ、悪友は問題を起こし企業を解雇される。
何をしたとかいえば窃盗である。
そして男は、悪友の穴を埋めるため地元に呼び戻された。

男は、悪友の家庭環境が問題を引き起こす原因だろうと考えていたし、
呼び戻されたことで悪友を恨む気持ちなど持っていなかった。
だが、悪友とつるむ事は少なくなってゆき、いつの間にか離れてしまっていた。
その後、悪友が飲食店を営んでいるとの風の噂を、男は聞いた。

数年後、悪友は彼の妻と子の命を奪い、自らも命を絶った。

男は何があったかなど知りたくもなかった。
ただただ、悪友が自殺という手段を用いたことを許せなかった。
いや自殺という手段を、彼が選ばざるを得なかったことが信じられなかった。

そして悪友がもうこの世界に存在していないことを、認めることができなかった。

だから男は未だ、悪友の墓前に手を合わせることができないでいる。
だから男は、狂った世界の中で、歩み続けることを自らに課している。
いつか、悪友にまた逢える日が来ることを願って。

松任谷由実のベスト盤2種のなかにこの曲が入っていなかったので、
ベスト盤と音圧を揃えるために音弄りしました。
彼女の曲の中で一番好きな曲であります。

泣ける曲であります。

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    • 126 bpm
    • Key: D
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